ふるさとの歌(II)-カナダ

ふるさとの歌(II)
(5)Un Canadien Errant
民族対立を内在するカナダ
 
今回のふるさとの歌(II)は新大陸へ飛び、北米最北の国、カナダ(Canada)の曲です。
カナダの地理や歴史が中高生の社会で取り上げられることは多くありません。せいぜい、面積が世界第2位で、首都はオタワ(Ottawa)。天然ガズ、石油、石炭、ダイアモンドなど鉱物資源に恵まれているといったところでしょう。歴史については近代史でほんのわずかに取り上げられることがあるぐらいではないでしょうか。
 
カナダは北アメリカ大陸の大きな部分を占める立憲君主国です。で、元首は?・・・そう、英国の王(女王)で、現在はエリザベスII世です。
カナダはこのシリーズ2回目のオーストラリア同様、英連邦(The Commonwealth)を構成する国の1つで、西はロッキー山脈の北部、北は北極圏、東には大きなラブラドル半島と近辺でケルトの色濃い島々、そして南はアメリカ合衆国と接しています。
オーストラリア同様、独自の国歌を持っていますが、英国女王の来訪時等には英国国歌が演奏されます。
 
カナダの政治と切り離せないのは民族問題で、特にフランス語圏のケベック(Québec)州では独立運動も盛んです。
ケベックにはアメリカリーグに所属するモントリオール・インパクト(Montreal Impactというサッカークラブがあり、アルビレックス新潟で2000年からプレーし、2003年のJ1昇格に貢献した深澤仁博(ふかさわ まさひろ)°が2005~2006年、所属していました。
今回のふるさとの歌は、そのケベックで19世紀中頃に起こった反英蜂起の曲です。
 
°カナダとは関係ありませんが、深澤選手は、新井健二選手(アルビレックス新潟→アルビレックス新潟・S経由)とともに現在シンガポールリーグのアームド・フォーシズFC(Armed Forces FC)に所属していて、明日、4月7日、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で日本の鹿島アントラーズと戦います。深澤選手自身、楽しみにしているようです
 
そもそもカナダには先住民族のイヌイットやインディアンの土地でした。
しかし、16世紀になってフランスが侵入し、フランス領とします。(Nouvelle France)
フランスはこの地を開拓し、植民地化を進めました。
ここで登場するのがまたしても英国で、18世紀半ばには英仏戦争が勃発しました。その時を歌った曲でBrave Wolfe(勇敢なウルフ)というのがあるのですが、そればまたの機会に紹介します。
1760年にモントリオールが落城し、1763年パリ条約でカナダの領有権はフランスから英国に移りました。そして、18世紀末までにカナダにはオンタリオを中心とする英語圏の高地カナダ*(Upper Canada)ケベックを中心とするフランス語圏の低地カナダ(Lower Canada)*が成立しました。
*Upper Candaを上カナダ、Lower Candaを下カナダとする言い方もありますが、この場合のupper、lowerには地形も加味されていますので、敢えて高地カナダ、低地カナダとしました。
 
  
  Philips’ Modern School Atlas(London, UK)に加筆
 
しかし、英国の支配を受けた土地の多くがそうであるように、カナダでも英国は自国の価値観を押し付けてきたのです。
フランス語を母語とする人たちと比べ英語を母語とする人や英国国教会に属する人たちへの人事面、経済面での優遇はフランス語を母語とする人、カトリック教徒やメソジスト教徒のフラストレーションを高めていきました。そして、1837年、隣国米国の影響も受けつつ、高地カナダ、低地カナダで相次いで住民が蜂起しました。
この蜂起は後に高地カナダ蜂起の指導者マッケンジー(William Lyon Mackenzie)と低地カナダ蜂起の指導者パピノー(Louis-Joseph Papineau)の名を取り、マク-パプス(Mac-Paps)と呼ばれるようになります。
 
低地カナダでの戦いは次の年に低地カナダ蜂起(Lower Canada Rebellion)へ続きます。

パピノーらの「愛国」軍はその同調者や米国の助けを借り英国軍に挑みますが、結果は英国の勝利に終り、ある者は処刑され、ある者は米国へ追放されました。
 
その戦いに敗れ、米国へ追放されたカナダ人を歌ったのが流浪のカナダ人(Un Canadien Errant)で、1842年にアントワヌ・ジェラン-ラジョワ(Antoine Gérin-Lajoie)によって書かれました。
 
ゆったりしたフォーク調の曲ですが、愛国的な歌として特にフランス語圏のケベック州ではよく歌われるようです。
 
   Un Canadien Errant              流浪のカナダ人
 
Un canadien errant, bani de ses foyers

流浪のカナダ人は国を追われ

Parcourait en pleurant des pays étrangers

涙にくれつつ異国をさまよう

Un jour, triste et pensif assis au bord des flots

悲しく思いにふける日、川面にたたずみ

Au courant fugitif il adressa ces mots

流れに向かって言葉を投げた

Si tu vois mon pays, mon pays malheureux

もし君が私の国へ来たら、不幸な私の国へ

Va dis à mes amis que je me souviens d’eux

私の友に言ってくれ、みんなを忘れないよと

O jours si plein d’appas vous êtes disparus

おお、過ぎ去った魅惑の日々よ

Et ma patrie, hélas, je me verrais plus

そして我が祖国よ、もう会えなくなるのだ

Non, mais en expirant, O mon cher Canada !

いや、しかし息絶え絶えで、おお、愛するカナダよ

Mon regard languissant vers toi se portera

うつろな目は君へと向かうのだ
 
フランス語の発音は特に英語に馴染みの深い日本人にとって少々難しいかもしれません。もちろん、英国人にとっても難しいようで、英語にはない発音がたくさんあります。Un Canadien Errant に関係のあるものについて少し触れます。
 
①hは外来語の固有名詞を除き発音されませんが、完全無視のhと子音扱いのhがあります。
 例:hélas=エラ(éは母音扱い)、Hiroshima=イロシマ(Hは子音扱い)
②単語の最後の子音は原則として発音されません。
③それにもかかわらず、次の単語が子音扱いのh以外の母音で始まる場合、多くは発音が復活し、後の単語とつないで発音されます。(リエゾン)
 例:mes=メ、amis=アミ、mes amis=メザミ
 例外:et(t は後の母音とリエゾンしない)など
④an、en、im等は鼻母音になります。errantははっきり「エラン」と発音するのではなく、antの部分が鼻に抜けます。(もちろん、t は発音しません。)
 nの後に母音が続くとn を発音します。
 例:en=アン(鼻母音)、en expirant=アネクスピラン
⑤英語と異なる発音がたくさんあります。
 例:ch=シ、シュ cher=シェール、ou=ウ
⑥母音の種類が豊富です。
 ドイツ語同様、オとエの中間、ウとイの中間の音に加え、二重母音の読み方もやや複雑です。
 
その他、フランス語は発音を重視する言語と呼ばれるように、発音に基づいた語形変化も多数みられます。
 
上の歌詞を無理矢理カタカナで表すと次のようになります。(euをウで表します。)
 
アン カナディアンエラン、バニ ドゥ セ フォィエ
パルクレ アン プルーラン デ ペイゼトランジェ
 
アン ジュール、トゥリステ パンシーフ アシゾボール デ フロ
オ クーラン フュジティーフ イラドゥレッサ セ モ
 
シ トュ ヴォ モン ペイ、 モン ペイ マルウールー
ヴァ ディザ メザミ  ク ジュ ム スーヴィアン ドゥー
 
オ ジュール シ プレン ダパ ヴゼット ディスパリュ
エ マ パトゥリー、エラ、ジュ ム ヴレ プリュ
 
ノン、メザネクスピラン、オ モン シェール カナダ!
モン ルガール ランギサン ヴェール ト ス ポルテラ  
 
Un Canadien Errant は比較的歌い易い曲ですので、下のYouTubeを参考に歌ってみてください。
    

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