ふるさとの歌(II)-ロシア

ふるさとの歌(II)
(8)Славное MopeСвященный Байкал
ヨーロッパ-アジアにまたがるロシア
今回のふるさとの歌(II)はまたヨーロッパに戻ります。ヨーロッパと言っても、世界一大きな国土を有する国、ロシアです。そして、私にとっては久しぶりのロシア語への挑戦です。
ロシア共和国、シベリアにあるバイカル湖は淡水湖で、古くからたくさんの歌が歌われてきました。
日本で最も広く知られているのは、恐らく映画「シベリア物語」とともに入ってきた За Байкал(ザ バイカル~バイカル湖のほとり)ではないかと思われます。
豊かなる ザ バイカルの 果てしなき野山を
  やつれし旅人が あてもなくさまよう
そして、その「やつれし旅人」は、シベリアで拘束され、逃げ出してきた囚人(デカブリスト)であったに違いありません。
19世紀の後半、帝政ロシアではツァールの圧政が国を覆い、それに批判的な人には容赦なく弾圧が繰り返されていました。
ここに紹介するСлавное MореСвященный Байкал(栄光の湖-聖なるバイカル)は、やはりネルチンスクかどこかで囚われの身となっていた政治犯が牢獄から逃げ出し、バイカル湖にたどり着き、オムリの樽を船にして、今まさに漕ぎ出した時の歌です。
私はこの歌をNHKラジオのロシア語講座で初めて耳にしました
 
ネルチンスクの牢獄を逃げ出した男は足に重い鎖をつけたまま山の中を逃げます。
本来見張りの役を果たすべき鉱山の番人は見て見ぬふりをしてくれます。
恐ろしい森の獣たちも襲ったりしません。
仲間の手を借り街へたどり着いた男は、人気のないことを確認し、神に感謝しつつ腹を肥やし、煙草を一服吸います。
そしてオムリを入れる樽を舟にし、古びたカフタンを帆にしてバイカル湖へ漕ぎ出します。
ひとたびバイカル湖へ出てしまえばもう追っ手は来ません。
行く手に見えるのは「自由」です。
ゴロゴロと音をたてる雷鳴さえ、頼もしく感じるのです。
ここに示した歌詞はD.P.ダヴィドヴァ(Д.П. Давыдоваによるものです
大凡の発音と私の拙訳を併記します。
翻訳、特に詩の翻訳はとても難しく、と言うよりほとんど不可能ですので、NHKラジオ講座での講師の説明を思い出しつつ辞書を引き引き、リズムに合わせて意訳したつもりです。
ロシア語の文字(キリル文字)は、英語を外(国)語への入口とする多くの日本人にとってはやや取っつきにくいかもしれません。しかし、慣れればそれ程抵抗はないと思います。むしろ無理矢理ローマ字化させたポーランド語などの方が奇異に感じられます。ギリシャ語をご存じの方は А,а=Α,α、Г,г=Γ,γ、Д,д=Δ,δ、Л,л=Λ,λ、П,п=Π,πР,р=Ρ,ρФ,фΦ,φ等々と対応させると、発音も含め、なんとなく理解し易い気もします。
 
     Славное MореСвященный Байкал
         スラヴナイェ    モーリェ        スヴィッシェンヌィ    バイカル
Славное море, священный Байкал,          栄えある湖(うみ)、聖なるバイカル
  スラヴナイェ    モーリェ      スヴィッシェンヌィ バイカル
Славный корабль – омулёвая(1)  бочка.       漕ぐ船は
オムリの樽よ
 スラヴヌィ        カラブル        アムリョヴァヤ       ボチカ
Эй, баргузин(2) , пошевеливай вал,             さあ、バルグジン、吹け、波立てよ
 エイ   バルグジン     パシェヴェリヴァイ   ヴァル
Молодцу плыть  недалечко.                 勇み帰り来ぬ。
 モーラツ        プリーツ     ニェダリェーチカ

Долго я звонкие цепи влачил,                 重き鎖を曳きて
   ドルガ ヤー ズヴォンキイェ  ツェピ  ヴラチル
Долго я влачил в горах Акатуя(3),               歩むはアカトゥイの山よ
 ドルガ    ヤー ヴラチル    フ  ガラハ     アカトゥヤ
Старый товарищ бежать пособил,             旧い同志(とも)の手を借りて
  スタールィ     タヴァリシチ   ビェジャト    パサビル
Ожил я, волю почуя.                           自由の空気(かぜ)見ゆ
オージル ヤー ヴォリュ パチューヤ

Шилка и Нерчинск(4) не страшны теперь,        シルカやネルチンスク恐れず
  シルカ  イ  ニェルチンスク     ニェ   ストゥラシュヌィ   チェピェル
Горная стража меня не поймала,                 山の番人(ひと)も眼をそむけ
  ゴルナヤ    ストゥラージャ  ミェニャ ニェ    パイマラ
В дебрях не тронул прожорливый зверь,        森の獣(けもの)影ひそめ
フ   ジェブリャハ ニェ    トゥロヌル        プラジョルピヴィ    ズヴェル
Пуля стрелка миновала.                        官憲(てき)の追手(て)逃れて
プーリャ  ストゥリェルカ     ミナヴァラ

Шел я и вночь, и средь белого                           真昼の岸辺に立ちて
シェル ヤー イ ヴノーチ   イ   スリェド  ビェロガ
Вкруг городов, озираяся зорко,         街の辺り見渡しつ
フクルーク   ガラドフ          アジラーサ     ゾルカ
Xлебом кормили крестьянки меня,       祈りささげ飢え凌ぎ
 ホリェバム      カルミリ         クリェスツァンキ    ミェニャ
Парни снабжали махоркой.            煙草(くさ)の香なつかし
 パルニ       スナブジャリ     マホールカイ
Славное море, священный Байкал,            栄えある湖(うみ)、聖なるバイカル
 スラヴナイェ      モーリェ     スヴィッシェンヌィ    バイカル
Славный мой парус – кафтан(5) дыроватый.   船の帆にカフタン張りて
   スラヴヌィ     モイ  パルス      カフタン       ドゥィラヴァートゥィ
Эй, баргузин, пошевеливай вал,                 さあ、バルグジン、吹け、波立てよ
 エイ     バルグジン   ポシェヴェリヴァイ     ヴァル
Слышатся бури раскаты.                        稲妻とどろけ
 スリーシャツァ       ブーリ    ラスカートゥィ
(1) омулёвая<омуль:オムリ~バイカル湖固有のマス科淡水魚
(2) баргузин<Баргузин:バルグジン~バイカル湖畔の村由来の風の名(六甲颪みたいなもの)
(3) Акатуя<Акатуй:アカトゥイ~アカトゥイ村(シベリアの小村)
(4) Шилка и Нерчинск:シルカとネルチンスク~バイカル湖東部の町
(5) кафтан:カフタン~衣類の一種。風で穴の空いたカフタンを船の帆にしています。халат(ハラート)となることもあります。ハラートも衣類(外套)のひとつです。

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